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4 公園

 公園には子供が数人いましたが、杏はいません。里美さんからの連絡では、十分ほど前にジャングルジムの上に杏がいるのを見たと誰かが言っていたそうです。
「…ふむ」
 小倉さんはジャングルジムを見上げました。上に登れば杏が何に興味を持って、どこに向かったかわかるでしょうか。しかし、今の小倉さんにはジャングルジムに登る勇気はありませんでした。ジャングルジムが壊れるか、小倉さんが落ちてけがをするかどちらかになりそうです。
『小倉さん…ずうっと気になっているんだけど、あれはなに?』
 ユキの視線を追って、小倉さんは空をながめました。
「あれは…飛行船だ。駅前デパートが宣伝のために飛ばしている、あっ、あれか?」
 杏はくつしたをぬいでいる最中に窓の外に飛行船を見つけて、うちをとびだしたのではないでしょうか。飛行船はゆらゆらとグラウンドの方に流れて行きます。

公園1

『ひこうせん…ていうのか。初めてみた…』
 ユキはつぶやきました。
 小倉さんは急いでグラウンドに向かいます。行く途中にやはり飛行船を眺めながらグラウンドに向かう子供達に出会いました。
「こりゃ…なかなかむずかしいな」
 グラウンドにはたくさんの人がいて、ゆらゆらゆれる飛行船を眺めています。この中から杏を見つけるのは並大抵のことではなさそうです。里美さんからの送られてきた写真で赤いスカートをはいていることはわかりますが、はやりの服らしく、似たような服装の女の子がたくさんいます。とりあえず、里美さんには、飛行船を見にグラウンドに行ったのではないか、とメールしておきました。

公園2

 しばらくして小倉さんが、
「もう、杏ってば。出かける時には行き先を言いなさいって言ってるでしょっ」
と言う声にふりむくと、里美さんが杏を捕まえたところでした。
「よく見つけたな」
 小倉さんが言うと、里美さんは杏の髪飾りをさわって、これよこれ、と言いました。
「お母さんが作ってくれたの、かわいいでしょ」
 杏が言ったので、う、うん、と小倉さんはうなずきました。そんな髪飾りなど写真ではまったく気づかなかったのです。

公園3

 見つかったからよかったけど、最初にユキが飛行船を見つけて、あれはなに、と聞いた時にちゃんとユキに質問にこたえてやれば、すぐにこのグラウンドにたどりついて杏を見つけられたかもしれないのにな、と小倉さんはちょっとだけ反省みたいなものをしました。
「あ…あれ、ユキはどこだ?」
 ユキの姿が見えません。
「犬を見なかったか、まっしろいスピッツなんだけど」
「いいえ、見ていないわ」
「おじいちゃん、一人だったよ」
 里美さんも杏も首をふりました。 
「…いつからいないんだ?」
 どうしてこう、みんな勝手な行動をとるんだよ。ユキのやつ、一人でどうしようっていうんだ。まてよ、なんで幽霊なのにこんな太陽の下、どうして出てこられるんだ?
 ひょっとして、どうにかすると体を手にいれるとか、なんかそんなことができるのじゃないだろうか。

公園4

 自分が彼だったらと考えました。そうしたら、もてそうな若い男の体をのっとるのじゃないだろうか。幼い女の子だったり、女子高生だったり、自分のような年寄りだったりしたら、意味がないのではないか。そう思うと少しだけ安心しました。身の回りに、もてるイケメンがいなかったからです。まあ、知らないイケメンなら、かまわないとまではいいませんが。小倉さんだって若い頃、もてる同僚には嫉妬したので、もてまくる男にはちょびっと意地悪な気持ちにもなるのです。
 そこで、小倉さんは考えるのをやめました。
 もともとものを深く考えるのは苦手だったし、考えても今のところ何の役にもたたなかったからです。人生が楽しくなることを考えようと思いました。
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